お知らせ

『歯科恐怖症』のあなたへ。

コロナちゃんのおかげで患者さんをセーブして

売上が半減しているにも関わらず、

人の採用に余念がない、

『狂気の逆張り院長』松下です。

 

今ウチは衛生士がウジャウジャいて

面白いことになってます。笑

余ってますがみんな僕の宝です。はい。笑

 

 

さて、先日こんなお問い合わせを頂きました。

 

「お電話代わりました。院長の松下と申します。」

「はい。」

「…えーっと、全身麻酔か静脈内鎮静での治療をご希望ということですね?具体的に今お痛みなど症状がありますか?」

「今は…。」

 

若い男性でしょうか?

 

会話のキャッチボールがうまくいかない

この感じ…

 

「今は痛みはないんですね。虫歯はたくさんありそうですか?どんな状態か、分かる範囲でいいので少し説明できますか?」

「えっと、結構ボロボロで…。子供の頃のトラウマで…。」

「怖くて歯医者には行けてないんですね?」

「はい…ネットで調べて…。」

「なるほど分かりました。ただ申し訳ないんですが、ウチは今保険診療での静脈内鎮静ってのはやってないんですよ。もしどうしても全身麻酔や静脈内鎮静でってことなら大学病院などに紹介ってことになりますが、どうされますか?」

「あ…じゃあ近くの歯医者に…。じゃあ…」

「あ!ちょっと待って!」

 

…ガチャっ。

 

僕なら、ふつうに治療できたかもしれないなぁ。

 

 

だいぶ前になりますが、

ブログで静脈内鎮静法(軽い全身麻酔みたいなもの)

による治療を紹介してからというもの

この手のお問い合わせをちょいちょい

頂きます。

 

たぶん『静脈内鎮静法』って検索したら

僕のブログが引っかかってくるんでしょう。

 

それを見て、いちるの望みをかけて

問い合わせてくる方もいらっしゃるん

だろうなぁ。

と思うとすごく申し訳ないのですが…。

 

怖いんです!楽に治療できる方法が

あるなら何とかして下さい!

 

って言われるとやってあげたくなるんだけど、

でもねぇ…。

 

ゴメンなさい。

今は保険ではやっておりません。m(__)m

 

そんなにカジュアルにやれるもんじゃ

ないんですよ。

 

実際ほとんどの歯医者さんが保険では

やってないと思います。

 

自費診療だとやってるとこ結構あります。

もちろん保険がきかないので費用は

かかるし、場合によっては数十万から

それ以上かかるでしょう。

 

でもね、絶望する前に今日のお話を

聞いて欲しいんですよ。

 

僕は、いわゆる『歯科恐怖症』の方々のほとんどは、普通に治療が可能だと思っています。

 

だからこそ、

静脈内鎮静ありき

のスタンスはとりたくないんです。

 

歯医者が怖くて怖くて仕方がない気持ち、

すっごく良く分かります。

 

僕も小さい頃、抑えつけられて、

ギャン泣きしながら治療した経験あるから、

トラウマになる気持ちも痛いほど分かります。

 

でも、今の歯医者はそもそもそんなに

痛くも怖くもありません。

 

それ以上に、

あなたが思ってる以上にあなたはできる子ですよ。

と僕は言いたい。笑

それに気付いて欲しい。

 

今日はそんな、

『歯科恐怖症』

の方々に向けて書きます。

 

彼らの背中を少しでも押してあげることが

できれば嬉しいです。

 

 

いわゆる、『歯科恐怖症』っていうやつ。

そもそも僕はこの言葉、好きではありません。

 

医者はなんでもかんでも『症』って

つけて病気にしたがるけど、

「あなたは〜症です!病気なんです!」

って言われたら患者さんもある意味

楽じゃないですか。

 

「病気か。じゃあ仕方ないか。」

 

って諦められるから。

 

ちなみに僕は、

『かぼちゃプリン恐怖症』です。

 

小さい頃の給食がトラウマで、

カボチャプリン見ると吐き気がします。

誰か助けてください。

 

この『歯科恐怖症』といわれる方々、

皆さん口をそろえて言います。

 

「とにかく痛いのがダメなんです!」

「イスに座っただけで震えが止まりません!」

「あの音を聞いただけで気が遠くなります!」

 

でも考えてみると、痛いのがイヤじゃない人は

いないし、

あの音を聞いたら気持ちが落ち着く

んだよね〜という人もあまりいないでしょう。

 

彼らが本当に怯えているもの、それは、

痛みそのもの、治療そのものではなく、

歯医者に行くことで訪れるであろう

まだ見ぬ自分の未来へのネガティブイメージ

これが本質だと思います。

 

つまり『現実の痛み』に対してというより、

「きっとものすごく痛いに違いない」と、

『自分で作り上げた痛み(妄想)』

に怯えているのでしょう。

 

だから、そういう方々にとっては、

こちらがいくら痛くないように気を

遣ったところでムダなんです。

問題の本質はそこじゃないからです。

 

彼らが怖いのは、今ある現実の痛みではなく、

痛くなるであろう未来なので、

今痛かろうと痛くなかろうと関係ないんですね。

 

どっちにしても治療の間中、

怖くて気の安まる暇がありません。

 

僕はメンタルクリニックの院長ではなく

デンタルクリニックの院長なので詳しい

ことは分かりませんが、

経験上、こういうタイプの人たちの根底には

対人恐怖と脅迫観念

この2つがあると思っています。

 

対人恐怖。

まぁ簡単にいうと、

知らない人に身体を触られること

自体が怖いわけですよ。

 

子供が分かりやすい例で、

なかなか口を開けてくれない子も

大好きなお母さんにはあーんして

くれますから。

 

あと、脅迫観念。

「こうでなければならない。」

という強い思い込み。

 

これらを治療前にひとつひとつ

潰してあげれば、大抵の人はふつうに

治療できます。

 

といったわけで僕がこういう方々に

どう接するかというと、まず、

僕への対人恐怖を徹底的に排除します。

 

具体的には、シンプルだけど

とにかく話を良く聞く。

 

こういった方々の場合、もともと

コミュニケーションが不得意なのに加えて

最初は特に緊張と警戒心で会話の

キャッチボールもままならないことも

よくあります。

 

こちらがボールを投げても上手くとれないし、

上手く投げ返すこともなかなかできません。

 

それでも、散らかったボールを拾いに

行きながら、

相手が取りやすいボールを

取りやすい距離まで少しずつ詰めながら

根気強く投げ続けます。

 

とにかく相手がどんなボールを投げてこようと、

「ナイスボール!」

と言って受け入れることに専念します。

 

会話の内容なんかどうでもいいんです。

このプロセス自体に意味があって、

「お?この人どうやら敵じゃなさそうだぞ?」

と思ってもらうことが目的です。

 

「この人になら身体を触られてもいいかもしんない♡」

と思ってもらえたら最高です。笑

 

 

次にやることが、

ここで起こりうる未来を全て詳細に示してあげる

ことです。

 

全体的な治療の説明もまあ大事なんですが、

こういった方々にはまず直近の未来から

ていねいに示してあげます。

 

イスを倒すとどうなるのか?

口を開けたらまず何をするのか?

 

そんなことから始まって、

子供によくやるやり方ですが、

使う道具も全部見せて、

使い方も説明します。

何なら、触らせてあげます。

手順も全部説明します。

 

顔にタオルをかけないで、

治療してるところを僕の解説つきで

一緒に見ながらやったりもします。笑

何されてるか分からないと不安になるからね。

 

この過程で、患者さんは、

治療に対する勝手な妄想から脱却して

正確な未来を予測できるようになります。

 

最後に、

『脅迫観念』から解放してあげます。

こういった方々の非常に大きな特徴は、

強い脅迫観念を持っていることです。

 

つまり、

「こうでなくてはならない。」

という強い思い込みがある。

 

痛みは我慢しなければならない。

治療は最後まで続けなければならない。

先生に迷惑をかけてはならない(迷惑ってのがそもそも思い込みだったりするんだけど)。

出来ない自分はダメなやつなんだ。

 

根がマジメなんですよね。

 

でも、それは違うんだよ、ということを

教えてあげます。

 

治療は途中でやめてもいいんです。

気分が乗らなかったら帰ってもいいんです。

あなたの身体のことなんだから、

あなたが決めていいんですよ。

僕はそのお手伝いをするだけです。

だから、イヤになったらいつでも言って

下さいね。

 

ってことを根気強く伝えます。

 

ここまでくればほとんどの方が、

少しずつでも治療できるようになります。

 

実際僕は10年くらい歯医者をやっていますが

全く何も出来なかった患者さんは

覚えているかぎり1人もいません。

 

静脈内鎮静に頼ったケースは

自閉症で意思の疎通ができない子供と、

パニック障害+強い嘔吐反射(オエってなるやつ)

のあわせ技でどうにもならなかった

ふたつだけです(パニック障害の方はその後ふつうに治療ができるようになった。笑)。

 

『歯科恐怖症』だと断定して

「静脈内鎮静しかない!」

と決めつけるのは簡単だけど、

前述のとおり静脈内鎮静は手間もコストもかかり、

患者さんの負担も小さくありません。

 

さらに歯科の特性上、再治療が必要になる

可能性はどうしてもあるので、

そのたびに静脈内鎮静で治療をすると

いうのは、やはりほとんどの方にとって

現実的ではないと思うんです。

 

だから、安易に静脈内鎮静とか

全身麻酔に頼るよりは、

治療後のケアとその先の人生も視野に

入れれば、できることならきちんと

歯医者に通える体質にしておいたほうが

いいと僕は考えています。

 

何とかしたい、という患者さんの意思と、

それにとことん寄り添う歯医者の心意気

と技量さえあれば、ほとんどの方に

それができると僕は信じてるので。

 

だから僕は、今は静脈内鎮静法は

積極的に採用せず、

どうしてもこれしかない、という時の

切り札として位置付けています。

 

 

僕は、僕と一緒に治療を頑張って、

最後までやりとげて、

その成功体験をきっかけに

人生をも前向きに捉えるようになった

元『歯科恐怖症』の方々をいっぱい

診てきました。

 

僕なら治療できたかもしれないなぁ…。

 

僕はしがないデンタルクリニックの

いち院長だけど、

冒頭の男性に対しても、

もしかしたら治療をとおして、

未来を、人生を、

明るく前向きに考えるお手伝いが少しでも

できたかもしれないなぁ…。

 

と、おこがましくも思いながら、

男性が勇気を持って一歩を踏み出し、

信頼できる歯医者さんに出会えることを

切に願う今日このごろでした。

 

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