今年最後のテーマは『ラバーダム防湿』
ある日、土岩が担当する患者さん(6)
を、僕が診ることになった時のこと。
「おーし、◯◯くん。今日も元気にムシ歯さんやっつけるか。先生と一緒に頑張るぞ!」
「…。」
「どーした、◯◯くん。先生の顔に何かついてるかい?イケメンだろ?」
「メガネ外すとこんな顔してるんだ…」
「おいおい、◯◯くん。冗談キツいな。目が悪いのかい?いつもの先生よりイケメンだろ?」
「いっしょ。」
「…。」
どーも初めまして。
院長の松下です。
さて、今日は僕の治療に対するこだわり
のひとつをご紹介しましょう。
中でもいちばん患者さんから、
「何コレ?」
と思われているであろう、
ラバーダム防湿についてのお話です。
口で説明するよりはまず見て頂いた方が
早いということで、
今日は実際の僕の診療風景にてご説明
致しましょう。
僕の患者さん、アムロ世代姐御系美人、
Aさんにご協力頂きました。
僕の手もとにご注目。
Aさんのお口に乗っかってるコレ。
コレがラバーダムです。
これじゃよく分からないですよね?
順を追ってご説明しましょう。
まず治療前の状態。
今日はこの左上の前歯を治療します。
仮歯を外した状態です。
ラバーダム装着。
拡大するとこんな感じ。
口腔内から治療する歯のみが、
ゴムのシートによって完全に隔絶されて
いるのが分かると思います。
この状態で治療します。
カンのいい皆様ならお分かりでしょう。
そう。
これによる最大のメリットは、
歯内への唾液による感染を完全にシャットアウトできる
ことです。
歯の内部には、神経や血管が入った
歯髄腔といわれる空洞があります。
ムシ歯などが原因でここに感染が及んだ
場合、この感染を取り除く治療(歯内療法)
が必要になります。
ウチではこの歯内療法を行う際、
ほぼ必ずこのラバーダムを装着します。
これ、当たり前です。
だってコレしないと、歯に開けた穴から
唾液がどんどん入ってくるでしょ?
口の中は細菌だらけです。
感染を除去する治療をしようとしてる
のに、逆に感染させるようなことに
なったら何やってんだか分かんない
ですよね?
僕は歯内治療をするにあたって、
歯の神経は可能な限り残す
やむを得ず神経を抜く場合は二度と
再感染を起こさせない(再治療にならない)
ようにすることを目標に治療しています。
歯内治療と言えば、ちょっと前は
歯科の中でも期間がかかる治療の
代表選手でした。
ちょっと治療して薬を詰めなおす、
これを何回もやる、みたいな。
感染源に対し、クスリでアプローチ
することに重きを置いていたからです。
しかし今の考え方は、
『感染源を物理的に除去し、
尚且つ細菌が増殖しにくい環境を
機械的に整えること』
これが重要であり、中に入れる
クスリは補助的なもの、というのが
主流です。
治療途中でクスリ詰めても詰めなくても
あまり変わらないという研究データも
あります。
つまり、何回も治療してクスリを詰め
なおすこと自体に効果はほとんど期待
できません。
だから僕の歯内治療は回数はかけません。
ほとんどの場合、1回か2回、多くても
3回で、歯の中の治療は全て終わらせ
ます。
そのかわり、一回あたりの時間を
多くもらいます。
患者さんには1時間くらいラバーダム
つけたまま頑張ってもらって、
集中して時間をかけて、
徹底的に中の環境を整える。
そして、やることやったらさっさと
閉じて終わらせる。
もちろんいろんな理由で回数を
かけなきゃいけない場合もありますが、
いたずらに回数をかけるのは、
再感染の機会に多く晒すだけで
意味はないと僕は考えています。
歯内治療で重要なのは、
・感染源、細菌を可能な限り排除する(全くゼロにはできない。いくら手を洗っても手のひらの常在菌をゼロにはできないのと一緒)
・細菌が繁殖しづらい環境を作り上げる
・再感染を起こさないよう、出来る限り
緊密に封鎖する
おおざっぱに言ってこの3点です。
これを達成するために大切なのは、
最終的な詰め物、被せ物まで含めた
確実な治療技術、
そしてラバーダム防湿です。
歯医者がよく使う、ラバーダムをしない
ことの言い訳として、
『ラバーダムをした方がいいというエビデンス(科学的根拠)がないから』
というのがあります。
確かに明確なエビデンスはありません。
つまり、
『ラバーダムをした治療と、しなかった治療を比べたら、明らかにした方が細菌の量も減らせたし治りが良かったよ』
という信頼度の高い研究データが
ないんです。
でも、さっきも言いましたが、
ラバーダムしないで歯に穴を開けたら
唾液が入ってくるんです。
そして口の中には大量の細菌が住んで
います。
感染するに決まってます。
小学生でも分かる理屈です。
明確なエビデンスを出そうと思ったら、
・ラバーダムをして抜髄(神経を抜く処置)した群
・ラバーダムしないで抜髄した群
この両者を比較して予後を追っかける
研究が必要です。
しかし、十中八九、常識的に考えて
やった方がいいに決まってるラバーダム
をせずに生身の患者さんに対して
抜髄処置をする行為は、
いくら研究のためとは言え倫理的に
問題があります。
研究データが出てこないのはこのためだと
考えられます。
確実な歯内治療にラバーダムは必要です。
ウチでは特別な理由がない限り必ず
つけます。
歯がボロボロでつけられないような
場合も、何とかつけられるような
状態にしてから治療を開始します。
手間もかかるけど、いい治療をする
ため、患者さんのためには絶対に
必要です。
とは言え、患者さんも大変だよなぁ。
治療中うがいができないし。
顔にタオルかけて、ラバーダムまで
すると患者さんの表情がほとんど
分からない。
苦しいだろうなぁ。ごめんよ…
と思いつつも治療に没頭していると、
不意に、ビクッ!と患者さんの体が動く
ことがある。
「〇〇さん、大丈夫?痛かったですか?」
「…。」
「…寝てるんかい。」
そう。
ラバーダムしたら寝る患者さん多いん
ですよ 笑
ラバーダムをすると、基本的に治療が
終わるまでうがいができず、口も閉じ
られません。
苦しそうでしょ?
でも実際は、喉にほとんど水が流れて
こないのでそんなに苦しくないんです。
喉に溜まってくる唾液はこまめに吸って
あげます。
おまけにゴムの張力のおかげで、
自分で力入れなくても口がある程度開く
ので楽チン。
結果、寝る患者さん続出 笑
診療室に患者さんのイビキが響き渡って
ることもよくあります 笑
長かったですね。今回。
最後までお付き合い頂けた皆様には、
ラバーダムの必要性がなんとなく
伝わったかと思います。
でもこれでも結構割愛したんですよ。
治療に対するこだわりについては
語り出せばいくらでも語ります。
だから僕らの話は長いんですよ。
ウチに来てる患者さんは分かって
らっしゃると思いますが 笑
特別なことはそんなにしてません。
当たり前のことを当たり前に。
ひとつひとつを疎かにしない。
僕らが共有する治療コンセプトの
ひとつです。
ついさっき、今年最後の患者さんを
送り出しました。
今年も無事、終えることが出来ました。
患者さんはもちろん、業者さん方、
そしていつも僕を支えてくれる
スタッフのみんなに感謝です。
みんなのおかげで僕は好き勝手
やれてます 笑
来年もいろんな構想がすでに進行中
です。
そしてこのブログももっと面白くなる
こと間違いなし!
…あ、来年の目標のひとつはブログの
更新頻度を上げることです。
今年は更新少なくてすんませんm(__)m
それでは皆さん、良いお年をお迎え
下さい。
来年もきらりデンタルクリニックを
よろしくお願いします。
ユナイテッドの選手が挨拶に来て
下さいました(^O^)
※撮影・掲載はAさんと鹿児島ユナイテッドFCの同意のもと行っております。