お知らせ

寄り添うということ

他職種連携会議なるものに出席した。

医師、看護師、ケアマネジャーなど

在宅医療に携わる様々な職種の方々との

意見交換の場であるが、

その中でこんなエピソードが

紹介された。

 

在宅でのターミナルケア(末期癌などで

治る見込みがない患者に対するケア)に

従事する医師の方が、

ある男性患者にこう言われたという。

 

「おれを殺してくれないか。」

 

その患者は他の職員にも訪れる度に

同様に懇願していた。

 

ある日、殺して欲しいと訴える男性に、

ある職員は、

「命を粗末にしてはいけない」

と説教をした。

 

するとその男性は、その職員に言った。

「もう二度と来ないで欲しい」

と。

 

 

僕は想像してみた。

僕なら、彼に何と言うだろう。

 

想像してみた。

「殺して欲しい」

と訴える彼の心を。

 

死を目前にした彼の、

痛み

苦しみ

悲しみ

怒り

憎しみ

恐怖

孤独

絶望を。

 

 

殺してくれ

と訴える彼を前に、

僕は何が言えるだろうか。

 

ひとしきり考えてみたが、

彼を救いうる気の利いた言葉は

何ひとつ思い浮かばない。

 

 

おそらく何も言えないだろう。

少なくとも、未熟な今の自分では。

 

何も言えないが、

彼を救う言葉はなくとも、

せめて黙って彼の隣で

涙を流せる人間でありたいと思う。

 

『生まれけり 死ぬる迄は 生くるなり』
(武者小路実篤)

ご予約・お問い合わせ
アクセス・診療時間