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我々が大切にしていること

僕が勤務医時代、

こんな患者さんがいた。

 

50代の女性で

歯には昔から苦労していた。

 

痛くなっては歯医者に行き、

痛くなくなったら通うのをやめる。

これを繰り返してきた。

僕のところにたどり着いた時には

相当悪くなっていた。

よくあるパターンだ。

 

そんな〇〇さんが治療に通い始めて

数ヶ月たった頃の話。

僕が今よりずっと下手くそで、

今よりもっと何も分かってなかった

頃の話だ。

 

それでも今と変わらず、

僕は〇〇さんに一生懸命治療方針に

ついて説明していた。

 

考えうる最良の選択肢はこれ、

それがダメならこれ。

全ての選択肢とそのメリットとデメリット。

 

〇〇さんは頷いてはいるが、

半分も聞いていなかった。

 

「…〇〇さん、僕の話聞いてないでしょ?理解できてます?」

〇〇さんは笑いながら言った。

「先生がいいようにやってよ。任せるからさ。」

「いや、ありがたいんだけど、〇〇さんの体だから。一応ちゃんと聞いて、自分で決めてもらわないと。」

「私は先生に任せてるから。悪いようにはしないでしょ?」

「…。」

 

僕は一瞬ためらってから、

こう切り出した。

 

「〇〇さん、僕はさっきも言ったようにこの方法がベストだと思います。でも実はこの治療、僕は経験がありません。腕のいい、できる先生を知ってるのでご紹介します。」

「先生できないの?」

「できないとは言いませんが…やった事がないんです。」

「じゃあ先生がやってよ。私は先生を信頼してるんだから。先生の好きなようにやって下さい。」

 

僕は必死で勉強し、入念に準備して

治療にあたった。

絶対に失敗するわけにいかない。

彼女の信頼を裏切るわけには

いかなかった。

 

術後の経過をハラハラしながら

追い、まずまずの結果にホッと胸を

撫で下ろしたあの時の気持ちは、

今でも鮮明に覚えている。

あの時の自分の実力からすれば、

出来うる最高の結果が出せたと思う。

 

僕が患者さんとの信頼関係を大切にする

理由は、まさにここにある。

 

医学的に一般的に考えて最も妥当な方法が、

個々の患者さんにとって必ずしも最善の

方策となるとは限らない。

 

このケースは極端な例かも知れないが、

医療者側の独善的なものではなく、

その患者さんにとって真に最善の医療、

最善の結果、

これを実現しようと思えば

患者さんと医療者との信頼関係は

必須だと僕は考える。

 

患者さんにはそれぞれ異なる価値観が

ある。

歯科医師も、それぞれ異なる治療方針を

もっている。

そこを擦り合わせた上でたどり着く

『その患者さんにとって』のベスト。

それは決して教科書的な一般論で

語れるものではない。

お互いの信頼関係の成せる業だ。

 

だから我々は今日も熱く

患者さんに語りかける。

あの時〇〇さんにそうしたように。

 

この人ががおれの母さんだったら…

 

そう思いながら。

 

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