歯科衛生士とAI
将来消える職業リストの中に歯科衛生士があった。
最近話題の人工知能『AI』を搭載したロボット
にとって代わられ、人間の歯科衛生士は必要
なくなるというわけだ。
確かにこの分野におけるテクノロジーの発展は
目覚ましい。
AIの発達により、これまで人間しか成し得な
かった認知や判断といった領域までロボット
が担えるようになりつつある。
将来、今存在する多くの職業が淘汰されていく
のは間違いないだろう。
身近で分かりやすい例が自動運転システムだ。
僕が生きている間にも、人が車を運転する光景
は見られなくなるのではないか。
これによりドライバーという職業は必要なくなる。
では歯科衛生士はどうか?
歯科衛生士の主な業務内容は診療補助だ。
準備や片付けも含め、歯科医師による治療の
言わばアシスタント的役割だ。
確かにこれなら頭のいいロボットならうまく
やってくれそうだ。
しかし歯科衛生士の仕事はこれだけではない。
例えば歯周病治療は歯石取りを始めとする
清掃しやすい環境づくりが治療の中心となるが、
実際の臨床においてこれはほとんど歯科衛生士
の仕事である。
この歯周治療は、患者さんの治療に対する
モチベーションが治療予後に大きく影響する
ため、毎回の施術に加え、患者さんの
モチベーションの維持・管理も歯科衛生士に
とって重要な仕事になる。
何をもって歯科衛生士が消えると言われて
いるのか僕は知らないが、おそらくこのリストの
作り手はこれら衛生士業務を、小器用な
ロボットで代替可能なルーティンタスクと
捉えているのだろう。
だとすれば実に臨床をナメた浅はかな意見だと
言わざるを得ない。
我々が臨床で相手にする患者さんは、
言うまでもなく生身の人間だ。
一人として同じ人はいない。
そのような中、我々は患者さんとの
コミュニケーションを通じて、
『その人にとって』ベストな対応、治療を
模索する。
例え似たようなケースであったとしても、
患者さんの性格、価値観、潜在的欲求、
生活背景にまで踏み込んだ時、
その判断は180度違ってくることだってある。
何億のデータを蓄積したところで、
そのような仕事がAIにできるとは
到底思えない。
そもそもロボットに、人の痛みや不安に寄り添う
ことが出来るわけがないだろう。
仕事において作業のスキルや精度、効率は
確かに重要だ。
その点において人間はロボットに敵わない
だろう。
しかし少なくとも医療の現場においては
それに優先して、
「人間らしさ」が求められると僕は思う。
どんなに腕が良くても、僕はロボットに
自分の命は預けたくない。
ロボットが人間の垣根を超えて来つつある今、
職業選択も含め、人間の在り方そのものが
大きく変化していくだろう。
そのような中で改めて問われるのは
人間とは何か?
人間らしさとは何か?
という根源的なテーマだ。
医療現場において患者さんと深く関わる職業、
歯科衛生士は今後もなくなる事はない。
そこで求められるのは、患者さんに寄り添える
「人間らしさ」だと思うから。
少なくとも、きらりデンタルクリニックでは
そうであり続けたい。